春雷 16

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「親父達も、意外にあっさりと納得してくれたな。やっぱり葵は、今でもそういう扱いなんだろうな」
 ゴソゴソとベッドに潜り込んで隣に辿り着いた途端、楽しそうにそう話し始めた佑輔に抱きつきながら、思わずムッと頬を膨らませた。
「もう、皆で俺を子供扱いしてさ。ホントにヒドイよな」
「そう怒るんじゃねぇよ。でも確かに、葵は大学に進むより、のんびりとバイトでもしながら過ごした方が似合ってると思う。俺も賛成だな」
「そうだよなぁ。俺も、自分でそう思うからさ。父さんみたいに大きな会社に入って、ガンガン働いてる自分って想像出来ないから。バイトしてゆっくりしてる方が似合ってると思うな」


 学校から帰ってきて、いつも通りに家族皆で夕食を食べながら、おじさんとおばさんに「大学には行かない」って考えている事をようやく話した。
 やっぱり、最初は遠慮して言ってるのかと思ったらしいけど、もう両親とも話し合って決めていた事だと教えてあげると、二人共、すんなりと納得してくれた。
 逆に、佑輔の方は大学に進むつもりだから、ソッチの方が大変だよなって思えてくる。
 最後には佑輔の進学先についての話題になってしまった、夕食時の会話を思い出していると、ゆったりと抱き締めてくれている彼が、頬に軽くキスしてくれた。


「葵、卒業後のバイトは何にするのか、もう決めているのか?」
「まだちゃんと話し合ってないんだけど、一応、兄さんの手伝いしようかなーって思ってる。俺が卒業するまでには、喫茶店みたいなお店を出したいとか言ってるからさ」
「あぁ、そうか。兄さんの手伝いなら気楽で良いな。2人でやるのか?」
「違うと思うなぁ。多分、兄さんの彼女も手伝うんじゃないかな。彼女の両親が飲食店やってるんだってさ。だから、最終的にはソッチを継ぐ事になるのかもしれないけど。すごく忙しいみたいだから、今はゆっくり喫茶店の方が良いみたい」
 今は離れて暮らすようになったから会ってないけど、何度か顔を合わせた事のある兄の彼女を思い出しながら、そう答えた。
 両親を亡くした後、突然、大学を辞めて調理師になる学校に通い始めた兄に驚いたけど、もしかしたら、彼女の実家の手伝うって事が、頭の中に浮かんだのかもしれない。
 おばあちゃんの手伝いで料理やってみたら、意外と楽しかったとか言ってたし……と思い返していると、パジャマの上から背中を撫でていた佑輔の掌が、スルリと中に潜り込んできた。
「親父も言ってたけど、葵は好きな事をやってるのが一番良いと思うな。イライラしてるのは葵らしくない」
「ん、分かった……でも、本当に良いのかなぁ。俺も一応、男なのに」


 胸元を辿っていく掌の心地好さに、思わず身体がブルッと震えた。
 愛撫に息を乱しながら、そうボソッと答えてみると、硬く尖ってきた胸の突起を軽く摘んだ佑輔が、深いキスで応えてくれた。
「別に良いんじゃねぇのか? 親父だって大学には行ってないし、好きな事を仕事にしてる訳だからさ。だから葵も気にせずに、好きな事をしてれば良いと思う」
「ん、そうだよな……そう考えれば、あまり気にしなくても良いかな……」
 話はまだ終わってなかったけど気持ち好過ぎて、もう頭がぼんやりしてくる。
 優しく包み込んでくれる佑輔にキスの続きを強請りながら、身に着けている物を剥ぎ取り始めた彼の動きに、素直に身を任せていった。




 佑輔とキスしたり、身体を合わせたりするのにも、もうすっかり慣れてしまった。
 最初は恥ずかしくてしょうがなかった「好き」って言葉も言える様になったし、ちゃんと気持ち好いって感じてる事も伝えられる様になってきた。
 時々、俺も佑輔も男同士なんだから、こんな事をしちゃいけないんだ……って頭を過ぎる。でも、それ以上に彼の事が大好きで、今はもう、この関係を止められそうになかった。
 佑輔と抱き合う度に気持ち好いのが増してきて、それを少しだけ不思議に思う。
 ココが好いとか言った事はないのに、彼はちゃんと反応を見て覚えてるのかなぁ……って考えると、恥ずかしいけどちょっと嬉しかったりする。
 身体中に施される愛撫に甘い啼き声をあげながら、佑輔の背中に腕をまわし、軽く爪を立てて快感に喘いだ。




「……あっ……佑輔、俺も……する……」
 猛ったモノから迸りそうになる絶頂感を堪えながら呟くと、微かに笑った佑輔が、口に含んで愛撫していたモノから顔を離した。
 軽く抱き締めて頬にキスしてくれた彼に、お返しのキスを返して、今度はベッドに横になった佑輔の昂りに、俺の方が顔を近付け、ソレを軽く握り込んだ。
 いつも最初のうちは佑輔に触られ、俺は喘いでばかりだから、ちょっと気分も落ち着いて、佑輔のもやってあげなきゃ……って思う頃には、彼のモノも既に硬く昂っている。
 今日はちょっと早く言ったつもりだったのに、やっぱりちょっと遅かったな、って悔しく思いながら、熱く勃ち上がって蜜を溢す佑輔のモノを、深く口の中に咥え込んだ。


「……っ、……あっ……ダメ……」
 佑輔のモノに舌を絡めた瞬間、まだ猛ったままの自分のモノにも同じ快感が走って、思わず軽い啼き声を上げた。
 慌ててその方に視線を向けると、楽しそうに笑った彼がまた愛撫を与えてくれる所で、また感じた柔らかな快感に、腰にブルッと震えが走った。
 気持ち好過ぎて早くイってしまいそうだから、佑輔のをして気を紛らわせようと思っていたのに、どうやらそんな気持ちもバレていたらしい。
 俺だって、佑輔が気持ち好くなってる顔を見るのは好きなのになぁ……と思いながら、互いのモノを咥え込んで、甘い愛撫を与え合った。


「んっ……も……いくっ……」
 時折、ビクリと震えて硬さを増していく、佑輔のモノに必死に舌を絡ませていく。
 上手に出来ているのか、何だか少し恥ずかしくてちゃんと聞いた事はないけど、でも、気持ち良さそうだから大丈夫だとは思っている。
 だからもっとしてあげたいけど、佑輔も俺のを触ってるから、これ以上、我慢出来そうにない。
 また身体を突き抜けていった快感を、何とかやり過ごしながら訴えてみると、猛った部分を愛撫していた彼が顔を上げて、また体勢を入れ替えてくれた。
「今日はどうする? 最後までした方が良いのか?」
「ん、最後までする……」
 ぎゅっと抱き締めて耳元で囁いてくる佑輔に、コクコクと頷きながら伝えると、軽くキスで応えてくれた。
 そのまま猛ったモノをゆっくりと埋めてくる彼の身体を、甘く喘ぎながら迎え入れていく。
 慣れない間はちょっとだけ怖かったけど、佑輔がいつも優しく抱いてくれるから、直ぐに慣れてしまって好きになった。
 愛撫だけでいくのも良いけど、この方が、一緒に気持ち好くしてるって感じがするから……と思っているうちに、奥深くまで押し入ってきた彼が、少しだけナカで動いた。


「葵、すごく可愛い。お前も気持ち好いんだな……」
 深く身体を繋げたまま、優しく髪を撫でながら問いかけてきた佑輔に素直に頷き、彼の腕に身を任せた。


 普通の時にそう言われると、何だか子供扱いされてるみたいでちょっとムカッてするけど、この瞬間だけは、佑輔に「可愛い」って言われたら、何故だかすごく嬉しく思う。
 そんな自分の気持ちに気付く度に、俺は本当に佑輔が好きなんだな……って、それを心の底から実感した。
 ずっと佑輔に可愛いって言われて過ごしていけるなら、どんなに幸せだろうなと考えてしまう。
 大好きな人の腕の中に抱かれて、この瞬間だけは色んな事を忘れたまま、身体の奥深くを突き上げてくる、彼の昂りの心地好さに溺れていった。






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