LovelyBaby 06

Text size 




 待ち合わせていた駅前、宿泊用の荷物を抱え、満面の笑みを浮かべて駆け寄ってくる奈宜の姿に、思わずホッと胸を撫で下ろした。
「随分早かったんだな。待ち合わせの時間前に来たつもりだったんだが」
「うん、俺が早過ぎたと思う。他に何も用事が無かったからさ。先に行って待ってようかなって」
「そうか……もう、身体の方は大丈夫か?」
 普段通りに彼の手から荷物を取りつつ、やけに嬉しそうな奈宜にそう問いかけると、少し頬を染めて俯いてしまった。
「もう大丈夫……ってか、改めて聞かれると、ちょっと恥ずかしいな」
「そうか? もし具合が悪い様なら、行先を変えようかと思っただけだ。他意はねぇよ」
「ありがとう。でも、ホントに大丈夫。体育も普通にやったし、全然平気だからさ」
 顔を上げて笑う奈宜の頭を撫でて、二人並んで歩き出す。


 姿の見えないメールでは無理をしてるんじゃないかと不安に思っていたけど、どうやら本当に治ったらしく、元気な彼の姿を見て、ホッと胸を撫で下ろした。
 楽しそうな笑顔を向けてくる奈宜に笑顔を返しながら、先週の日曜日に行く筈だった映画館に、のんびりと足を向けていった。






 週がずれたのが良かったのか、映画館は予想以上に空いていた。
 人影も疎らな館内の割と後ろの方に、奈宜と並んで腰を下ろし、買ってきたお菓子を食べつつ映画が始まるのを待った。
 コメディタッチの映画だから、しっとりした雰囲気にはならないけど、随分と楽しそうな奈宜の姿が可愛らしくてしょうがない。
 闇に紛れて抱き寄せた腕に素直に従い、身を寄せてきた彼の身体を抱き寄せたまま、時折、軽いキスを交わしながら、奈宜の手を握り締めた。


 男の俺にこんな事をされて、素直に従う奈宜の気持ちが、どうしても未だに掴みきれずにいる。
 彼がまったく嫌がっていないのだけは分かるけど、それは子供の頃から続くスキンシップの延長と考えているのか、それとも、彼が望んでいた様に、恋人同士の女の気持ちを理解する為の演技なのか……それが、どうしても分からなかった。
 もう単なる知人や友情を超えた領域に踏み込んでいるのは、彼も充分に分かっている筈だと思う。
 それでも嫌がる素振りのない彼にとって、自分はどんな位置にあるのか、想像してみても分からない。
 奈宜の気持ちを推し測って苛立ちが募るものの、それをどうしても、奈宜本人には聞けずにいた。
 邪気の無い彼の気持ちに、俺は付け入っているだけなのかもしれない。
 ポツポツとしか埋まっていない映画館の片隅で、無邪気な笑い声を上げる奈宜をしっかりと抱き寄せたまま、未だに迷いの残る自分の気持ちを持て余しながら、ぼんやりとスクリーンを眺めていた。






*****






 一緒に潜り込んだベッドの中、素直に寄り添ってきた奈宜の身体を抱き締める。
 軽くキスを落としただけで、蕩けた表情を浮かべてきた彼を胸元に抱えこんで、柔らかな髪にキスを落とした。
 足を絡めあった下肢が重なり合い、もう互いにキスだけ昂り始めているのが分かる。
 細い奈宜の腰を引き寄せ、猛ったモノを服越しに押し付け合いながら、喘ぎ始めた奈宜の唇を思う存分、貪っていく。
「……怖くないか? 奈宜」
「平気。だって二回目だから……もう分かってるから大丈夫」
「良い子だ。今日は痛くしないから。何も心配しなくていい」
 可愛らしく頷いてくれた彼の様子に頬を緩め、また唇を貪っていく。


 何の躊躇いもなく、背中に腕を廻してきて抱きついてくる彼の服を剥ぎ取りながら、初めて身体を合わせた数日前より、随分と自分の気持ちに余裕がある事に気付いた。
 これならきっと彼に告げた通りに、今日は快感だけを与えてやれると思う。
 奈宜に僅かな苦痛も与えたくはないから……と、逸る気持ちを抑えながら、細い腰に掌を滑らせ、下肢を覆う服を剥ぎ取った。
 全身に施される愛撫に免疫のない彼の肢体は、キスを交わしながら掌で辿っていくだけでも、直ぐに甘い反応を示してくれる。
 曝け出した可愛いモノにたっぷりと愛撫を与えた後、買ってきたジェルで濡らした指を、繋がる部分にスルリと滑り込ませた。


 一瞬、微かに強張った華奢な身体も、今日は何の抵抗もなく滑り込んだのを感じたのか、直ぐに安心した様子で力が抜けていく。
 前回は随分と性急だったらしい自分の行為を省みながら、腕の中に収めた奈宜に沢山のキスを落として、ゆっくりとその内部を解していった。
 その間も萎える事なく、甘い表情を浮かべて心地良さそうに腰を揺らめかせている奈宜は、もう全く恐怖心は持っていない様子で、何だか仔猫みたいな仕草が可愛らしい。
 買い物ついでに聞いてきた、快感の走る場所を指先が掠める度に、甘く喘いでビクリと震える身体が愛おしくてしょうがない。
 色々と聞いてきて良かったと思いながら、彼に押入るのを待ち侘びている猛ったモノを、たっぷりのジェルで濡らした後、大きく足を広げた奈宜の下肢を持ち上げ、ゆっくりと昂りを埋めていった。


 無理矢理に押入っている感が強かった初めての時より、スルリと入り込みそうになるモノを必死で抑え、ゆっくりと先に進んで行く。
 気持ちが浮付き過ぎていて前回は気付かなかった、彼の柔らかく締め付けてくる内襞の感触を感じながら、全てを彼の深部に埋めた後、ベッドに横たわっていた身体を持ち上げ、膝の上にへと抱え込んだ。




「奈宜、痛くないか?」
「痛くない、大丈夫。すごく気持ち好い……」
「そうか。自分でするのと、どっちが良い?」
「もう。そういう事を聞くなってば。恥ずかしいから」
 色付いていた頬をますます染めて、そう言いながら抱きついてきた身体を抱き締め、ククッと笑いながらキスを交わした。


 こんなに蕩けた甘い表情を浮かべているのに、まだあんな言葉に恥じらいを見せる奈宜の姿が、本当に可愛らしくてしょうがない。
 今まで身体を重ねた誰にも感じなかった暖かな気持ちを抱えながら、奈宜の身体をうつ伏せにさせて、その華奢な背中に覆い被さった。
 掌にジェルを少しだけ落とし、奈宜の腰を軽く持ち上げ腕を廻し、勃ち上がっている彼のモノを握り込む。
 また甘く啼いてくれた可愛らしい声を聞きながら、ゆっくりと彼の深部を穿ち始めた。




 「女の子に馬鹿にされたくないから」と、この行為を誘う間際に理由を言っていた奈宜は、もしかしたら好きな女がいるのかもしれない。
 そう考えるだけで、何処の誰かも分からない女に対して、強烈な嫉妬心が込み上げてくる。
 その衝動のままに、掌に握り込んだ、蜜を溢す奈宜の昂りを抜き上げ、激しく腰を打ち付けていく。
 腕の中に飛び込んできた奈宜を、もう誰にも渡したくない。心の底からそう思っているのに、まだそれを彼に告げる勇気が持てずにいた。


 淫靡な音に混じって聞こえてくる奈宜の喘ぎ声に、胸の奥が掻き乱される。
 ガキな女の事なんか忘れて、俺との心地好い行為に溺れてしまえばいい……そんな事を考えながら、きっと自分自身の方が、奈宜を貪る行為に溺れていた。




 うつ伏せになった彼の、なだらかな曲線を描く背中に唇を這わせ、細い首筋に軽く歯を立て跡を残す。
 淫らに啼いて身を震わせ、昂りから甘い蜜を放った奈宜の最深部に、猛ったモノを深く埋めて、欲情の証をしたたかに注ぎ込んでいった。






BACK | TOP | NEXT


2009/3/12  yuuki yasuhara  All rights reserved.