LovelyBaby 10

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 初めて森崎の家に二日連続で泊まる事を決めた日に、本当の恋人同士になれた事は、本当に偶然だけど良かったなって思っている。
 あと少しで夏休みになるし、その間に旅行に行こうって、先週話した時より、もっと早くなってしまった予定に二人で笑いながら、のんびりと晩御飯を食べてきた。


 俺が夏休みになったら平日も彼の部屋に来れるし、「そしたら、部屋の掃除とかは俺に任せて!」って宣言したら、森崎さんは「大袈裟だな」と笑ってたけれど、快く受け入れてくれた。
 まだ彼には全部話してないけど、本物の恋人同士じゃないから……と、我慢してた事は沢山ある。
 きっとそれは、俺の願望だけで終わって、叶う事はないんだろうなって諦めていたけど、それが夢じゃなくなってしまった。
 いきなり全部は無理だけど、ちょっとずつそれを実行して、彼を驚かせてあげよう……と考えながら、今までより随分とリラックスした様子の森崎と二人っきりで、のんびりと週末の夜を過ごしていった。






 潜り込んだベッドの中、先に寝転んで煙草を吸っていた彼の隣は、もうほんのりと暖かくなっている。
 横たわってギュッと抱きついてみると、楽しそうにくぐもった笑い声を溢した彼は、煙草を揉み消すと、いつも通りに身体の上に覆い被さってきた。
 身体に馴染んでしまった彼の愛撫に、簡単に身体の奥が疼いてくる。
 ゆっくりと服を剥ぎ取ってくる、彼の掌が素肌に触れる度に、ゾクリと甘い震えが走った。




「……どうした、奈宜?」
「今日は俺もする。初めてだから、すっごく下手かもしれないけど……」
 森崎が服を脱いでる最中、身を起こしたら不思議そうに問いかけられた。だから、そう答えを返して、ベッドに座っている彼の下腹部の方に、初めて顔を近づけた。
 彼にそうして貰った時、すごく気持ち好いから、俺もしてあげたいな……って思っていた。
 でも、森崎はそれを強要してこないから、「男からされるのは嫌なのかな」と、どうしようか迷っていたけど、もう本当の恋人になったから、その迷いも無くなった。
 初めて握り込んだ彼の猛ったモノが、掌の中でビクリと震える。
 ちょっと驚いた表情を浮かべている彼をジッと見上げた後、掌の中で熱を帯びて勃ち上がっているモノに、ゆっくりと唇を寄せていった。


 いつも彼にして貰ってるのを思い出しつつ、口に含んだ彼のモノに舌を絡ませ、舐めながら抜き上げていく。
 上手に出来てるかどうかは聞かなくても、乱れ始めた彼の吐息と、髪を絡めて時々グッと力の入る彼の指先の動きで、彼が感じてくれているのが分かってしまう。
 ますます硬さを増しながら甘い蜜を溢す彼のモノを咥えたまま、チラリと視線を上げてみると、彼がジッと喰い入る様に見詰めている。
 何だかそれが嬉しくてしょうがなくて、よりいっそう彼のモノを深く咥え込んだ。


「奈宜……もう、いいから……」
 頭に乗せられていた掌を退けて、余裕のない声色でそう呟く彼の言葉を無視し、猛ったモノを抜き上げていく。
 先端だけを唇で挟み、口に含んで舌先で突いた瞬間、「……クッ、……」と抑えた喘ぎ声と共に、温かなモノがドクリと口の中に注ぎ込んできた。
「……ばか、初めてなのに……無理するな」
 呆れた声で呟く彼の声を聞きつつ、口元を拭いながら顔を上げた。
 ちょっと楽しくなってきて、笑いながらベッドに横たわる彼の隣に寝転んでみると、チュッと頬にキスされた。


「気持ち好かった? 上手に出来たかな?」
「ばか、見れば分かるだろう……ったく、変な味だろう。気持ち悪くないか?」
「大丈夫。森崎さんのだし。全然気持ち悪くなんかない」
 自分の愛撫に彼が感じてくれる事を、こんなに嬉しく思えるなんて知らなかった。
 弾んだ声で答えた俺の言葉を、苦笑いで受け止めてくれた彼に組み敷かれ、首筋を唇が伝い降りていく。
 さっきのお返しと言わんばかりに施される、彼からの手慣れた愛撫に、今度は俺の方が甘い喘ぎ声を洩らした。
 いつも俺がやって貰ってばかりだから、彼はあんまり楽しくないんじゃないかな……って不安に思っていたけど、実際に反対の立場になってみたら、そうでもない事に気付いた。
 だから、ちょっと恥ずかしくて色々と反応しそうになるのを我慢してたけど、もう気持ちを抑えなくて良いよなと思いながら、今まで以上に丁寧に肢体を伝っていく彼の掌に、素直に啼き声を上げ続けていった。




「……あ、…森崎、さん……やっ……」
 彼にしてあげたのと同じ様に、猛った部分を口に咥えられて、ゆっくりと舌先で愛撫される。
 ブルッと腰に走った快感に喘いでいると、顔を上げてきた彼がニヤリと口元を緩めた。
「奈宜……もう、名前で呼んでも良いんじゃねぇのか?」
「え……将貴…さん……」
 促されるまま、そう名前を呼んだ瞬間、一気に胸が高鳴ってきて、頬がカッと熱くなった。
「――うわぁ……まだダメ! すっげぇ恥ずかしい……」
「そうか? でも奈宜はイク瞬間だけは、いつも『将兄ちゃん』って言ってるじゃねぇか」
「……え、そうだっけ……?」
「あぁ。自分で気付いてなかったのか?」
 笑いながら答える彼の言葉を聞きつつ、色々とその瞬間の事を思い出してみる……確かに、そう呼んでるかも……と思い当たった途端、もう本当に逃げ出したくなってきた。
「……森崎さんの馬鹿……何で、もっと早く教えてくれなかったんだよ……」
「俺は名前で呼んで貰う方が嬉しいからな。無意識だったのか?」
「うん……恥ずかし過ぎる……」
「まぁ、急に強制しても難しいだろうからな。でも奈宜はもう俺の恋人だから、俺は名前で呼んでくれた方が嬉しい。気が向いたら名前で呼んでくれ」
 広げた足の間に身体を入れてきた彼が、また覆い被さってきて軽くキスを落としてくれた。


 サイドテーブルに置いてあるジェルを取ろうと、彼が腕を伸ばした拍子に、また勃ち上がり始めている彼のモノが内腿に触れた。
 それにビクリと反応してしまう、自分の気持ちが可笑しくなってきて、思わずクスクスと笑ってしまった。
「どうした。何か思い出したのか?」
「ちょっと違うかな……あのさ、もう沢山してきたから慣れたと思ってたんだけど。ちゃんと『好き』って言ってからするのは、全然違うなぁ……って」
 指先をジェルで濡らしながら問いかけてきた彼に、そう答えると、ククッと笑った森崎が、また覆い被さってきてキスしてくれた。
「確かにな。奈宜も急に、随分と積極的になったな」
「うん……やっぱり、無理して抱いてくれてる、って思ってたから。俺は女の子の身体と違うし、だから、どうすれば良いのか分かんなかった」
「そうか……俺は奈宜にしっかりと欲情してるから、それは全く気にするな。それより、今日は長くても文句を言うんじゃねぇぞ。俺に一回出させたのは、奈宜の仕業だからな」
 ニヤリと口元を緩めて、楽しそうにそう呟く森崎の指先が、スルリと中に入り込んできた。
 無意識に上げそうになった喘ぎ声を唇で塞がれ、ゆっくりと内襞を解していく彼の指先に身を震わせながら、激しいキスを貪っていく。




 もう全部分かったと思っていた彼は、本当の恋人になったら少し違う印象になったけど、前よりもっと好きになった。
 彼も、今までより自分の気持ちを出す様になった俺を見て、きっと同じ事を思ってるんだろう。でも、それで嫌われたりはしないだろうな……って、何故だかそれだけは確信していた。
 色んな余計な事を考えずに、全部伝え合えるって、本当に心地好く思う。
 やっぱり恋人同士って、特別な関係なんだな……って、ようやくそれを実感出来た。


 小さい頃からずっと大好きで、もう逢えなくなってからも忘れられなくて、いつまでも想い続けていた彼の『特別な人』になれて、本当に嬉しく思う。
 彼の事を好きでいて良かった……と、心の底から実感しながら、彼から与えられる甘美な愛情を、全身で受け止めていった。






     LovelyBaby 《The end》






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2009/3/29  yuuki yasuhara  All rights reserved.