同棲事情 09

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 とても美味しい夕食を味わった後、少し身体とお腹を休めてから、部屋続きの小さな露天風呂にへと足を向けた。
 二人並んで座るとちょうど良い位の大きさの露天風呂は、いつも使っている家のバスタブよりかは広いけれど、大浴場よりかは当然狭い。
 夕方前に楽しんだ時より随分と密着した距離で、奈宜と一緒に湯船に浸かった。
 奈宜がまだ幼い頃に行った家族旅行で旅館に泊まったことがあるそうだけど、ぼんやりとしか覚えてないみたいで、ハッキリと覚えている限りで温泉に入るのは、どうやら初めてだったらしい。
 大きな露天風呂で遊んでいる時、そんな思い出を話していた奈宜は、二人きりの部屋にあるこじんまりとした露天風呂にも、とても嬉しそうに入ってくれた。




「あ、こっちも温泉になってるんだ。お湯の色もそうだけど浸かった感じみたいなのも、やっぱり普通のお湯とは少し違う気がするな」
「そうだな。何となくだが、お湯が柔らかい感じがする。肌に優しそうだな」
「分かるかも。触ったら肌がスベスベしてる。母さんが入ったら喜びそう! 旅館の中じゃなくて、露天風呂だけの所もあるんだって。今度は母さん達も入りに行くように教えてあげなきゃ」
「この辺りだと、電車やバスを乗り継いででも遊びに来れる。お母さんの友達との小旅行にも良さそうだな」
 そう答えつつ、嬉しそうな奈宜の腕に手を伸ばして、軽く肌を撫でてみた。


 奈宜はまだ10代で若いし元々からきめ細かい肌をしているから、何もしなくてもとっても肌触りが良いものの、確かに普段にも増してぷるぷるしてて触っているだけで気持ちが良い。
 大きな大浴場の露天風呂もほとんど貸切状態に近かったものの、完全に二人きりではなかったから、こんな風に肌に触れたり、あまりいちゃいちゃは出来なかった。


「夜空を見ながらお風呂って、こういう所でしか入れないから嬉しいな。旅行に来てるんだなって凄く実感する」
 星が綺麗な夜空を見上げて嬉しそうに呟いた奈宜の声を聞いて、彼と並んで夜空を見詰めた。
「大きな風呂だけなら街の銭湯でも同じだが、こういう本格的な露天風呂はさすがに無理だな。部屋にも付いている宿を選んで正解だった」
「ホント。大浴場に行った時は、まだ夕方前だったもんね。大きいお風呂から見た景色も綺麗で楽しかったけど、こういう小さな露天風呂も良いな。将貴さんと二人だけだし沢山お話も出来るしさ。先にアッチに行っておいて正解だったかも」


 普段から週に何度かは一緒にお風呂に入っているけれど、やっぱりこういう開放的な空間で眺める奈宜の裸身は、本当に色っぽくて堪らない。
 少し離れた所から照らしてくる部屋の灯と、とても綺麗な月明かりに照らされて、いつも以上に艶かしく感じてしまう。
 少しお湯が白濁している濁り湯だから、見えそうで見えない所がますます欲情をそそってくる。
 隣でゆったりと身体を伸ばしている奈宜の太腿に掌を伸ばし、そっと優しく撫でてみた。


「あ、将貴さん。そういう所ばっかり触ってくるんだから……」
「腕を触ったらスベスベしていたからな。コッチの方が肌のきめ細かな所だし、触り心地が良さそうだ」
「……ホントにそれだけかなぁ。何となく触り方とか、腕の時とちょっと違う気もするんだけど」
 太腿の外側から内腿にへと掌を滑らせた瞬間、奈宜がちょっぴり呆れた溜息交じりでそう訴えてきた。
 それはかなり正解だから、あえて返事をせずに掌をゆっくりと足の付け根の方に辿っていくと、奈宜の溜息が少しだけ変わってきた。
 普段の明るくて元気な奈宜からは想像し難いけど、実はとっても身体の感度が良い子だから、もうかなりその気になっていると思われる。
 一番敏感な部分をあえて避けて内腿だけを愛撫しつつ、抱き寄せた奈宜と舌を絡ませ、深いキスを交わしていると、お湯の境目から見え隠れしている小さな胸の突起が、ぷっくりと尖っているのが目の端に留まった。


「――――……あっ、やだ……こんな所で……」
 貪っていた唇から離れ、今度は胸の突起に舌を這わせてあげると、奈宜が甘い声で咎めてきた。
 少しだけ喘いだ奈宜が上半身を軽く捩らせた瞬間、白濁したお湯の奥から、硬く昂った奈宜のモノが薄っすらと姿を見せた。
 見えそうでハッキリとは確認出来ないその部分に、一気に気持ちが昂ってくる。
 細い腰を両手で持ち上げ、暖かな温泉で淡い桜色に染まっている奈宜を湯船の縁に腰掛けさせると、その足を大きく広げさせて、彼の股間をじっくりと見詰めた。




「もう……将貴さん、何でこういう意地悪ばっかりするのかなぁ。今日は旅行中だし、外のお風呂だから大丈夫だなって……お布団の中でするのかと思ってたのに」
 大浴場では何もしなかったから、奈宜もすっかり油断していたらしい。
 恥ずかしそうに前を隠している手を退けて可愛く震えている部分を露にし、いつになく昂った奈宜のモノに軽く舌を這わせた。
「こういうお湯は良いな。見えそうで見えないから、逆に色々と駆り立てられる。布団の中も良いけど、外でした事がないし、今日はコッチだな」
 そう答えて甘い蜜の滲んでいる先端を口に含んでやると、また奈宜が甘い啼き声をあげた。


 誰も来ないのが分かっていても、やっぱりちょっと恥ずかしいのか、普段より抑え目の喘ぎ声が物凄く色っぽく感じてしまう。
 勃ち上がった奈宜のモノを咥え込み、舌を絡ませて愛撫しながら、お湯の中で彼のモノに負けじと猛っている自分のペニスを片手で握り締め、激しく抜きあげていく。
 普段と違う場所での行為に、二人してやけに気持ちが昂ってしまっている。
 あっという間に限界を迎えそうになった奈宜の昂りから唇を離して後ろを向かせ、小さなお尻に掌をかけた。
 柔らかなお尻を広げて繋がる部分を舌先で愛撫してあげると、啼き声にあわせて時折きゅっと動いたりして、此方もとても可愛らしい。
 奈宜の腰に手をかけたまま立ち上がって、彼のお尻に股間を近づけると、もう我慢の限界を迎えそうに猛っている昂りを押し当て、ゆっくりと沈めていった。


「――――……あっ……ん……」
 埋めたモノが最深部に到達した瞬間、少しだけ大きな声で喘いだ奈宜がビクリと身体を震わせた。
 もう達したのかと思いつつ前の方を弄ると、まだ何とか我慢出来たらしく、熱く猛ったモノに指先が触れた。
「まだ大丈夫だったんだな。もうイッたのかと思ったぞ」
「ん……もう出ちゃいそうだったけど……我慢出来た……」
「そうか。でも、俺もそんなに我慢出来そうにないな。奈宜が気持ち好い時は、俺も同じだ」
 先に一人で達してしまうのを何とか踏みとどまってくれた奈宜の耳元に、背後から唇を寄せて、そう囁いてあげた。
 少しだけ恥ずかしそうに、でも可愛らしくコクリと頷いてきた彼の首筋にキスを落とし、ゆっくりと腰を動かし始めた。


 すっかり宵闇に隠れてはいるものの、やっぱり外でのエッチは恥ずかしいのか必死になって啼き声を堪えている奈宜だけど、でも背後から突き上げる動きにあわせて、内襞は気持ち好さげにキュッと蠢いて締め付けてくる。
 そんな仕草も色っぽくて、腕を廻して握り締めた彼のモノを抜きあげながら、一緒に快感を追い求めていく。
 あんまり本気で怒った様子もなく素直に身体を開いてくれた奈宜も、ちょっぴり期待していたのかもしれない。
 一緒に過ごしている時間が長くなればなるほど、俺好みな可愛らしさを増していく奈宜の姿に、もうずっと夢中になっていた。




「……あ……将貴さん、もう……」
「そうだな……俺も、そろそろ限界だ……」
 猛った部分をフルッと震わせ、甘い蜜を零しながら小声で訴えてきた奈宜に、昂りを擦りつけながらそう答える。
 普段と違う場所で眺める奈宜の裸身に興奮し過ぎて、もうそろそろ我慢も限界に達してきた。
 深部を突き上げてくる勃ち上がったモノを、いつもより強く締め付けてきた奈宜が、ぶるっと身体を震わせ啼き声を洩らした。
 硬いモノを抜きあげている掌の中に、暖かな液体が流れ込んでくるのを感じる。
 白濁の蜜を吐き出した奈宜の昂りを握り締めたまま、腰下まで浸かっている温泉より熱い彼の深部に、欲望の飛沫をしっかりと注ぎ込んでいった。






*****





 朝食を頼んでいた時間ぴったりに、仲居さん達がご飯を運んできてくれた。
 時間通りの早起きが得意な奈宜が起こしてくれたから良かったものの、俺一人だったら絶対に寝過ごしていたに違いない。
 露天風呂で沢山色んな事をして暑くなったから、窓を少しだけ開けて寝たのがかなり効いてくれたらしい。
 時折微かに聞こえてくる木々が風に揺れる音が心地好過ぎて、奈宜の身体を抱き枕にしたまま、本当にぐっすりと眠ってしまった。
 こんな気持ちの良い朝を迎える事が出来ただけでも、旅行に出かけた価値がある。
 毎年一回は奈宜と二人だけで旅行に出る事を決めようかと真剣に検討しつつ、旅館の朝食らしい和食御膳に手を伸ばした。




「将貴さん、すごく熟睡してたみたいだけど。疲れは取れた?」
 まだ少々ぼんやりながら朝食に箸を伸ばしていると、味噌汁のお椀を持ったまま、奈宜がふと思い出した様子で問いかけてきた。
「あぁ、かなり良く眠れたな。疲れもすっかり取れている。温泉の効能が効いたのかもな」
「それはあるかも。チェックアウトまで時間があるし、朝風呂にも入って帰りたいな」
「俺は当然、そのつもりだったぞ。奈宜も一緒に入るだろう?」
「うん、一緒が良いな……でも将貴さん、もうエッチな事しちゃダメ。朝になったし外には人が沢山いるんだから」
 昨夜の露天風呂での事を思い出したのか、ちょっぴり恥ずかしげに声を潜めた奈宜が、可愛らしく睨んできた。
「大丈夫だ、何もしないから安心しろ。あんな可愛い姿を他人に覗かれたら大変だからな。誰もいない時だけにしておこう」
「あ、そんな理由なんだ。俺がすごくエッチな子みたいに聞こえるんだけど。すぐに悪戯してくる将貴さんが悪いんだと思うな」
 美味しい朝御飯を堪能しつつ、奈宜が半分笑いながら抗議してきた。
 それに対して謝りながらも、こんな姿もとっても可愛いなと心底思うし、何より会話自体が本当に楽しくてしょうがない。
 奈宜が相手の時は、どんな内容でも会話が弾むし、いつまでも一緒にいたいと思っている。
 とっても可愛い子供だった昔と比べてみても、こういう大人っぽいやりとりが出来る様になってきた今の方が、より一層、彼の事が好きになった。


 男同士だという普通と違う点はあるけど、奈宜と共に暮らす事を決めて本当に良かったと実感している。
 この気持ちを忘れないように、やっぱり毎年「新婚旅行」という名の旅に出かけようと心に決め、奈宜と二人で朝食を終えて、露天風呂の方に向かっていった。






 時間ギリギリまで部屋で過ごし、旅館のロビー片隅にあった小さなお土産物屋で、少しだけ買い物をした。
 帰り道沿いにある観光地にも何ヵ所か寄って行く予定にしているから、そこでのお土産もあった方が良いだろうし、此処で全部買っていく必要はない。
 皆で食べられそうなお菓子を幾つか適当に買っておいて、残りは帰る道すがらに買い揃える事にした。


 観光ガイドブックやカーナビで色々と調べてくれている助手席に座る奈宜の指示に従い、色々な観光名所で車を降りて、休憩がてらに楽しんでいく。
 奈宜は男の子だから自主性も旺盛なのか、こういう場合は人頼みにせず、自分から色々と調べた上で俺の意見を聞いてくれて、遊ぶ予定を立てていた。
 彼と遊びに出かける時は、いつも毎回そんな感じで決めているし、今回の旅行みたいに俺の方から提案した場合でも、奈宜は細かな手配をやってくれる。
 車の運転で手伝いが出来なくても奈宜はこういう場面で大活躍してくれるんだから、俺は充分に助かっているし、普段の日常生活の事も含めて日々感謝していた。
 今まで改めて伝えた事は無かったけど、やっぱり言っておいた方が奈宜も喜んでくれそうな気がする。
 家に戻ったら自分達用のお土産を楽しみながら、それも話してあげようと、上機嫌な奈宜と観光地を散歩しながら、そんな事を考えていた。




 今回立ち寄った所には、商品が色々と充実した大きめな土産物屋があるらしい。
 残りは一ヶ所だけの予定だし、此処で全部買い揃えておこうと話が纏まり、奈宜と一緒にお店の中にへと入っていった。
 俺は基本的に買い物が苦手な方だと自覚があるから、奈宜が選んだ物に頷くだけで、あまり口出しはしない様にしている。
 随分と楽しそうに家族皆のお土産を選んでいる奈宜の後を、彼の荷物持ちに徹しながら、大人しく付いて歩いた。


「ねぇ、将貴さん。お父さんとお母さんって甘い物が好きな方かなぁ? お漬物の方が良いかな」
「あの二人は漬物の方が喜ぶんじゃないか。達治はダメだな、アイツは洋食派だ。甘い物でも大丈夫だから、アイツにお菓子で良いだろう」
「あ、そうなんだ。確かに、達兄ちゃんは甘い物が好きかも。じゃあ、こっちのクッキーも買っておこうかな」
 土産なんか適当で良さそうな気もするけど、奈宜はどうやら真剣に悩んでいるらしい。
 色んなお土産を吟味しつつ、真面目に考え込んでいる奈宜の姿を微笑ましく見詰めた。




 週末の二日間だけだったけど、思う存分、可愛くて優しい奈宜を独占して一緒に過ごし、本当に楽しい時間を満喫出来たと思っている。
 もう充分に満足したから、そろそろ彼を大好きな周囲の皆にも返してあげようかなと、そう思える余裕も出てきた。
 これから日常の日々に戻り、また奈宜を独占したくなってきたら、こうして二人っきりで旅行に出かければいい。
 次は何処に出かけようかな……と早くもそれを考えながら、同棲を始めた一年前より少しだけ大人の雰囲気が増してきた奈宜の隣で、皆へのお土産を選んでいった。






     同棲事情 《The End》






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