Eros act-5 13

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 ジェイを襲った犯人が「逮捕された」との報道は、本当に申し訳程度にしか流れなかった。
 ワイドショー関連では報道すらされず、ニュース番組でも彼が重傷を負った時とは間逆で数分程度しか流れなかったし、当然、逮捕された犯人とやらの映像も存在しない。
 新聞でも数行程度、人違いでジェイを襲ってしまった旨の犯人とやらの供述が記されているだけで、犯人に関する記述はほとんど無きに等しい扱いに終始していた。
 後に何かの話題に上ってしまった場合に誤魔化せるよう、対外的に適当な辻褄合わせを行ったに過ぎない。
 新しい話題が世間を賑わせ、ジェイの事件など既に忘れ去られようとしている頃、ジェイを襲撃した犯人に関する偽情報をひっそりと送り出されただけで、今回の事件は表向き上、あっさりと終結した。


 当然、報道された犯人は架空の人物だし逮捕された本人も存在しない上に、ジェイ本人を含む当事者がこの終わらせ方を望んだ以上、恐らく今後一切、話題に上る事すらないと思われる。
 結局、異色な御曹司であるジェイの私生活が暴露されてしまっただけで、本質的に曖昧さを残したまま、関係のない者達へ向かって静かに幕が降ろされていった。






*****






 台湾マフィアがジェイの事件に関わっていると聞き、直ぐに連絡を取った阿公からは「数日間、待ってくれ」と即座に答えが戻ってきた。
 俺が情報を掴むより一足早く、阿公の元にも話が舞い込んでいたらしく、彼自身も今までに起こった記憶の無い事態に驚いていた。
 ジェイが絡んでいる以上、もし彼が本気で事を起こせば、単純にマフィア同士の抗争や、俺が普段依頼している彼等とは直接何の関わりもない次元の抗争などとは、全く解決法も違ってくる。
 黒社会の実力者である阿公といえども、東郷一族を相手に下手な対処をしてしまえば、かなり危うい立場に陥る可能性を否定出来ない。
 ある意味、政界の利権絡みで頼まれる、金の動きのみでの活動の方が、阿公達も状況を把握しやすかったんだろう。
 そう考えると、異国での暗躍を生業とする台湾マフィアに属する者達にとっては、阿公を筆頭とする幹部連に意見を求めず、個人的な取引で見知らぬ者を襲撃に動いてしまった者が存在した事実の方が、大きな問題だったと思われる。
 阿公の口振りからも、東郷側との交渉云々より、むしろその方を重く受け止めて真相究明にあたっている様子が伺われた。
 とにかく詳細が分かってから……と、既に実行犯のあぶり出しにかかっている阿公から告げられれば、こちらから返す言葉は特に無い。
 阿公が俺に対して適当な対応で終わらせる筈がないし、お互いにそれは理解している。
 俺の方で掴んだ情報と、阿公の方で手に入れている情報とを軽く確認しあった後、もう少し事件の全貌が判明するまで待つ事に決めた。


 それからほんの数日しか経っていない昨日の夜、想像していたよりも早く阿公から連絡が入ってきた。
 あいにく遠方に出ていた事もあり、話を聞くのは戻ってきた今日まで遅れてしまったものの、案外早く解決した方だと思う。
 ただ、その結果次第では今度は俺の方が窮地に立たされる事になる。
 俺にとっても初めて発する可能性の高い、腹心へ対する疑惑に関して思いを巡らせながら、阿公の店にへと向かった。






 阿公が表向きに経営している漢方薬局店に勤めている薬剤師達は、俺の事を「阿公が若い頃から仲良くしていた友人の孫」だと思っている。
 実際、祖父が現役だった頃は連れだって出入りしていたから、特に俺から説明するまでもなく、皆の間では当然の様にそう伝わっているらしい。
 顔を出しただけで和やかな笑顔で出迎えられ、阿公に来訪を伝えるまでもなく、いつもの様に奥の部屋へと通されていく途中「一人での来店は珍しい」と、何気ない口調ながらも指摘された。
 普段は阿公の元を訪れる場合、誰かを伴って来る事が多いものの、今回は深水が関わっている可能性が高い事もあって、一人で来たから怪訝に感じたのかもしれない。
 ちょうど客足が途切れた瞬間だったらしく、こちらに好みを聞くまでもなく直ぐに用意されたお茶に手を伸ばしつつ、「今日は私的な事を相談に来たから一人なんだ」と、気軽に声をかけてくる見慣れた顔の薬剤師に言葉を返した。


 阿公の店で働いている日本人の薬剤師達は、彼と同年代になる一番古株の者ですら、阿公の裏の顔を知らされていない。
 表と裏の顔を完璧に使い分けている阿公だし、今更何者かによって正体を掴まれたり、それが公にされてしまったりと、そうならないだけの地位を築いている。
 ただ、万が一の事があった場合に迷惑をかけてしまう可能性が高い従業員達には、その辺りも考慮しているのか、かなりの厚待遇を与えている様に思う。
 それが却って功を奏しているのか、阿公の店で働く者達の入れ替わりはあまり見られず、皆、よほどの事情が無い限りは辞めていく事がない。
 もし阿公の本業がバレたとしても、彼等は特に驚く事もなく淡々と受け止めそうな気がする。
 ――――いや。既に分かっているのに、知らぬ振りをしているのかもしれない……
 和やかな笑顔で話しかけてくる年配の薬剤師と話をしつつ、ふと、そんな事が脳裏を過ぎった。


 頻繁に訪れる訳でもない俺が、偶々一人で訪ねたのに気付く位に観察力の優れた彼が、日々顔を合わせている阿公の動向にを気に留めない筈がない。
 いくら阿公が異国で暮らす若い同胞達の相談役だからと言っても、こうも頻繁に様々な他人が訪ねてくれば、少々不審に思っても当然だと思う。
 ましてや、俺みたいに祖父の代から親しくしている日本人までもが、阿公とは何に関係もない「仕事上の付き合いのある知人」と称する男達を引き連れて出入りするなど、あまり常識では考えられないだろう。
 さほど勘の良い奴ではなくても何らかの疑念を抱いて当然な状況なのに、彼等は一言も口に出す事無く阿公の元を訪れる者を迎え入れ、淡々と店の奥にへと案内していた。
 彼も阿公も、お互いに「気付いている」事を知りつつ、そ知らぬ顔して表向きの店を動かしていると、そう考えた方が自然な気がした。


 忠誠心の厚いトミーを筆頭にしたマフィアの部下達と同じく、阿公はきっと此方側の世界でも、部下達と強い信頼関係を築いている。
 裏社会の阿公が何日もに渡って店を留守にしている最中、表の世界で彼を慕っている皆は、マフィアの連中と真意では変わりなく、忠実に阿公の志を遂行し彼等の世界を守っていた。
 そんな阿公を目標にしてきたし、特殊な環境に身を置いている立場上、俺自身もそうで在りたいと心掛けてきたつもりだった。
 自分と深水との間にある関係も同じだと、つい先日までは考えていたのに、それは俺の自惚れに過ぎなかったのか……?
 彼が関与している可能性が判明してから、ずっと胸の奥で考え続けている疑問をまた思い出しながら、阿公がやってくるまでの間、彼のもう一人の腹心と話を続けていた。







 程なく部屋に入ってきた阿公は、特に怒っている様子はなく、まったく普段と変わりがない。
 もっとも、彼は普段から無闇に感情を表に出すタイプではないし、それがより一層、阿公が本気を出した時の凄みに変わっていた。


「用件は分かっているし、雑談で時間を潰している余裕もなさそうだ。主犯は深水だったのか?」
 彼の方こそ俺の性格を知り尽くしているから、余計な言葉など必要ない。
 向かいに座った阿公に単刀直入に問いかけると、美味しそうにお茶を味わっていた彼が、ゆっくりと頷いた。
「あぁ、そうだ。深水と個人的に親しくしている者が、彼に頼まれて自分が抱えている若いのを出したらしい。もっとも、襲った奴から返り討ちにあったのは初めてで、それなりにショックを受けている様だな。本国では暴れん坊で幅を利かせていた子達がほとんどだし、最近の日本人は大人しい連中が多いから、アイツ等も慢心していたんだろう。若い連中にとっては却って良い薬になった」
 話を聞いた直後の様子は分からないものの、今現在の阿公の気分は、逆に不気味に感じる位、やけに落ち着いているらしい。
 至って静かな口調でゆっくりと話を続ける阿公を前に、徐に溜息を吐いた。


「彼等の処分に関しては、阿公が納得出来る様に決めてくれれば、それでもう充分だろう。深水は何か理由を話して依頼していたのか?」
「いや、詳しい事情は聞いていないそうだ。そもそも話を受けた者ですら、一応は深水から報酬を受け取っているものの、単純に知人が困っているから助けてやる程度の、軽い気持ちで引き受けていたらしい。深水は普段から、皆とはかなり懇意にしている。単純に日本人の知人ではなく、同胞に近い感情があったのかもしれない」
 元々の切欠は俺の仕事上の付き合いから始まっているけれど、今では俺からの取引とは別に、台湾人の奴等と深水は何故だかやけに親交が深い。
 阿公はともかく、実行犯となる下っ端の奴等とも話をしているのを見かけた事もあるし、No.2と称されるトミーとはプライベートな付き合いもあるらしいと、ちらりと小耳に挟んだ事もある。
 その事に関してとやかく言うつもりはないし、彼の私生活にまで口を挟む理由も無い。
 ただ、その繋がりを逆手に取り、俺や阿公の許可もなく私事でマフィアを動かしたとなると、話は全く違う物になってしまう。
「――――……深水のヤツ……一体、何を考えて……」
 無意識に口を吐いてしまった呟きが聞こえたのか、目前の阿公が湯呑茶碗を手に、咎めるような視線で顔を顰めた。


「落ち着け、ヒロ。そういう言葉は普段のお前らしくない。平常心を欠いていては理解出来る筈の事さえ、簡単に見逃してしまう」
「……あぁ、そうだな。少し取り乱してしまった様だ。冷静に考えた方が良いと、自分でも分かっているつもりなんだが……」
 阿公に窘められるまでもなく、それは自分自身が一番よく分かっている。
 そう頭では分かっていても、無二の腹心であった深水の理解し難い大きな謀反に、内心の動揺を隠し切れなくなってきた。




「武内代議士だが、彼も同性愛者だ。その繋がりが元で、ジェイと親しくしていたらしいな。俺は何も気付いてなかった」
 少し話題を変えて話しかけると、阿公は軽く頬を緩めた。
「そうか。色々と口に出し難い話題だろうし、本当に私生活の事だ。仕事上の繋がりがあっても知らなくて不思議ではない。あの会見で分かったのか?」
「あぁ。切欠はそれだが、本人にも直接会って確認した。ジェイから俺が同性愛者向けの風俗へ進出を考えている事を聞いていたし、俺の素性に関してもジェイに教えていたそうだ」
「多分、私も同じ頃に聞かされたんだと思う。子供の頃から面倒を見ている子が、あの街でボーイをやっている。ヒロの進出話を聞いて『何か頼まれている事は無いか?』と確認に来た。あの頃は本当に頼まれ事は無かったから、そう答えておいたんだがな」
「そういう繋がりもあるのか。阿公に話を通した時、特に驚いた様子もなかったから、少しだけ不思議に思ったんだが……」
 阿公にそう答えた瞬間、何か言い様のない妙な感覚が頭を過り、口を閉ざした。


 ハッキリと断言出来ない何かが、自分の認識と少しずつズレている気がする。
 一つずつの繋がりを考えれば、何も問題は生じていない。分からないのは「深水がジェイ達を襲撃しようと思った原因」だけで、他は全ての繋がりが判明している。
 事実なんてモノは、そういう些細な事柄の集まりに過ぎず、大して気に留めるまでもなく認識されて当然な筈なのに、何か一番大きな事を見逃しているような――――そんな胸騒ぎが治まってくれなかった。


 俺の一番古い部下になる深水には、普段の仕事上は政治家相手の事柄しか任せていない。だが、あの界隈への進出話の詳細は知らせていた……
 そう考えた所で、また何か引っかかる物を感じた。
 ジェイの事件後に武内代議士と話していた時、彼は『犯人には心当たりがある』と言っていたし、事件そのものに関しても特に驚いた様子は無かった。
 あの瞬間は深水の話題など一言も出てこなかったものの、今となってある程度の事について把握していたとしか思えないし、あの行動を起こした理由の一つに深水の存在も入っていると思われる。
 事件後も変わった様子はなく、淡々と仕事を続けている深水も武内代議士と同じく、何か俺に隠しているんだろう。
 それは分かっているし、何かが繋がっているのも理解している。武内代議士が深水を庇い、口を閉ざしていたのは間違いない。
 でも、それがどうしても一つの線になっていない気がして落ち着かなかった。




 自分自身で何かを間違っているのは分かっているのに、それが何だかが分からない。
 もどかしさに無言を貫き考え込んでいると、向かいに座る阿公が真正面からジッと見据えてきた。


「ヒロ、苛立っても答えは出ない。もう皆の間では決着の付いている話だ」
「……そうだな。分かっていないのは、きっと俺だけなんだろう」
「お前が納得出来るまで、じっくりと考えてみると良い。時間に制限は無い」
「あぁ分かっている。先日、寺尾警視監と話をした時、東郷氏の護衛についている中川の息子について聞いた。一番下の奴はジェイと一緒に店を出しているそうだが、一番上の兄がマル暴にいる。近日中に顔合わせをする予定になっている」
 阿公を前に考えていても、深水の気持ちが理解出来る筈もない。
 話題を変えて言葉を続けてみると、阿公が軽く口元を緩めた。


「そうか、東郷氏の護衛が父親なのか……何か言われたのか?」
「俺に対しての言葉は無い。意向を聞いただけだ。東郷家としては、今回の件に関しては手を引くよう要請してきている。ジェイ本人の考えらしい」
「武内代議士がかなりの情報を流しているだろうし、マル暴が身内にいるって事は、お前の手の内は知られている。ジェイ達も深水の存在は知ってて当然だし、真犯人だと辿り着いたんだろう。この件の幕引きをお前に任せるつもりだ」
「――――……あぁ、分かっている。深水は俺の部下だ。俺が処分を下すしかないだろう」


 常なら何の躊躇いもなく発する言葉を、無意識のまま言い淀んでしまう。
 他の奴等ならともかく、共にこの世界のノウハウを祖父から学び、唯一本心を語れる相手だと胸の内で思っていた深水に対して、そう簡単に今後の事を決められる訳がなかった。
 思わず阿公から顔を逸らしてしまったのに、彼がジッと見詰めている気配だけは伝わってくる。
 彼が今すぐの決断を迫っている訳でもないのに、何故だか阿公の静かな視線が、やけに重く圧し掛かってきた。




「ヒロ。深水は感情の細やかなヤツだ。上辺だけの考えで物事を動かすヤツじゃない。それから、彼が狙ったのはジェイではない。ジェイの恋人である一稀の方だ。ジェイが一稀を庇って自分から盾になり刺されてしまった。今回の件に関しては、深水が予想していたのとは違う結果になってしまった様だな」
「やはり、そうきたか……その可能性があると聞いていたが、それが本当ならますます理解し難くなる。俺との話でも話題に上っていたジェイを狙うのならともかく、何故、恋人の一稀とやらを狙うんだ? そもそも、ジェイと一緒に暮らしている恋人の存在など、今回の事件後に初めて知り得た情報じゃないか。アイツはどうして一稀の事を知っていたのか……全く意味が分からない」
「それこそが深水が今回の事件を引き起こしてしまった理由だろう。今は分からなくて当然だ。だが、今でも彼の気持ちは揺らいでいないと、私はそう思っている。ジェイに怪我を負わせてしまった事に関しては、それなりに戸惑っているだろうがな」
 そう話す阿公の方に、逸らせていた視線を向けた。


「――――阿公は……深水の目的を知っているのか? 理由は分からないと言ってただろう」
「彼の依頼を受けた者から話を聞いて、何となくだが大体の事情は理解出来た。何故、彼が皆を動かそうと思ったのか……それを少し考えた方が良い」
「……そうだな。何か理由があっての事だと思う。だが、それを考慮に含めるべきかどうかは分からない。本人の気持ち次第になるだろう。それより、阿公の方は大丈夫なのか?」
 いずれにしてもこの場で答を出すつもりはないし、話題を外して一つ気がかりな点を問いかけた。
 最後はこの話題になる事を予想していたのか、阿公も慌てる様子もなく頷いた。


「心配するな。トミーがキッチリとやってくれてる。少なくとも当分の間は、無断で騒動を起こす様な真似はしないだろう。ジェイ達に対する復讐劇なども考えぬよう、私の方からも特に強く言い聞かせてある。彼等もヒロとは違う意味で、無闇に敵に回すには巨大過ぎる連中だからな」
「それは俺も同じくだな。ジェイ個人にも興味があるし、少なくとも敵対する様な関係には、なりたくないと願っている。ジェイが退院したら正式に彼の店に行こうと思っている」


 自分達を襲撃した者を追い詰める事無く、あっさりと見逃してしまえる余裕こそ、彼等が真に恐るべき者達である証明だと思っている。
 深水の起こしてしまった問題ではあるものの、それに絡めて俺自身の度量も試されている様な……そんな気がしてならなかった。
 ほんの少しでも方の付け方を間違えてしまえば、もう先は無いのかもしれない……
 そんな緊張感を覚えながら、また細かな情報を話し始めた阿公を相手に、少しでも自分の考えを纏めようと思考を巡らせていった。






 阿公の店を出た所で、外で待機させていた見張りの者達を解散させる事に決め、携帯電話の受話器越しにそう告げた。
 彼等が直接話しかけてくる事はないものの、今は一人静かに考えを纏めたかった。
 今回の事件に深水が関わっている可能性があると気付いた瞬間は、彼の勇み足ではないか? と、チラリと考えてしまった。
 深水に直接関係のない仕事ではあるけど、俺から上手く話が進んでいないと日々聞かされていた事もあって、親しい台湾マフィアにジェイを襲うよう手引きを廻したのではないか? と、その考えが最初に浮かんだ。
 とはいえ、様々な背景が浮かび上がってくるにつれて、どうやらそうではない事が判明してきた。
 それと同時に、ますます深水が動いてしまった理由が自体が、俺の予想から大きくかけ離れたモノになってる。
 俺が全く気付いていない、何か忘れてしまっている様な大きな違和感の原因を、深水と直接話をする前に、どうしても納得しておきたかった。


 無言で一人で歩き続けている途中、携帯電話が着信して振るえているのに気付いた。
 何気なく視線を向けたディスプレイに映し出された名前に、思わず足を止めて見詰め直した。
 まるで見張っているんじゃないかと勘繰ってしまう程、慶からの連絡はいつも絶好のタイミングで飛び込んでくる。
 通話ボタンを押して耳に当てながら、ジェイの事件後から初めて、ようやく連絡を寄越してきた慶の顔を思い浮かべていた。






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2011/01/27  yuuki yasuhara  All rights reserved.